2023-05

BE DESCRIBED AS "HELLSINKER"

ゲームレビューです。

HellSinker.

ジャンル:STG
機種:PC(windows98se/ME/XP)
定価:1000円(イベント価格、税込)
製作:RUMINANT'S WHIMPER

公式ページ
http://sanagimaru.nobody.jp/


プレイ状況:残機+1設定で本編とExステージAll
(プレイ時間に関しては測定機能が無いため不明)

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STG。最近主流となっている弾幕STGとは別モノで、画面下部での細かい弾避けや幾何学的な形状を持つ弾幕の美しさをメインとしたゲームでは無い。状況に応じて多彩な武器を使い分けて進むタイプのSTGである。

特徴としてはその独特なシステムが挙げられる。いくつか例を挙げよう。

・スコアシステム
通常のスコア(SPIRIT)、敵破壊数、アイテム回収数の3つの値が同時にカウントされていく。SPIRITを稼ぐための条件と他の2つを稼ぐための条件は一致しないことも多く、どれを狙うかによって大きく戦略は変わってくるだろう。スコアと敵破壊数についてはエクステンドシステム(後述)に関わってくる。

・決別の霊廟
通しプレイ中に特定の条件を満たすことで出現する特殊ステージ。条件を満たした面と次の面の間に挿入される形で出現する。残機が無限であり、開始時にスコアアイテムが全て没収され、終了時にここで残した成績に応じた倍率を掛けられて返却される。スコアを増やせるボーナスステージなのだが、慣れない内は思うような成績を残せずにスコアが元の値より低下してしまうこともあり、ボーナスステージであるということすらわからない人も居るかもしれない。
このステージの出現はミスにより早まり、エクステンドにより遅くなる。元のスコアを何倍かしたスコアが得られるわけだから、できるだけミスを減らし終盤に出現させた方が良いスコアを残すことができるだろう。

・残機上限
エクステンドアイテムを必要数取得することでエクステンドするが、残機を持てる上限を超えるとスコアに変換される。この上限はオプションで±1の範囲で変更で可能。低い設定にすることで難易度が高まる反面、高いスコアを狙うことができる。

・エクステンドシステム
エクステンドに必要なアイテム数はエクステンドを重ねるにつれて増加するが、一定の条件(SPIRIT、もしくは敵破壊数)を満たすことで必要なアイテム数が初期状態に戻ると共に1エクステンドが得られる(BREAKTHROUGH)。一般のSTGにおいても一定のスコア達成によってエクステンドを得ることでゲームを大きく進行させることができるが、このゲームにおける一定のスコア達成は他のゲームに比べてとても大きな恩恵が与えられると言える。BREAKTHROUGHというシステム名の通りだ。

・ボム
ボムの数が自然回復するため、緊急回避用の武器に留まらず高威力の攻撃用武器としての意味合いも強い。オートボム、条件付オートボム、オートボム無しの3つから選択することが出来る。オートボムを選択することで単純に難易度が下がるということは無く、決別の霊廟の出現が早くなりやすいなどの欠点もある。残機の上限と同様、目的と実力に応じて選択するべきものである。


・ゲームランク
多くのSTGにはプレイヤーの実力に合わせて敵の攻撃が激しくなったり緩やかになったりする仕組みがあるが、あくまでゲームを楽しんでもらうための裏方的なシステムであり、意図的に調整できるようなゲームはあまり無い。存在自体気付かれないのが理想であるとも言える。
このゲームにおけるゲームランクは残機数やスコアと同様に目に見える値として表示されており、専用アイテムの取得により上下させることも可能である。これの高さによりスコアの回収に大きな差が出るため、高スコアを狙うには意図的に高いゲームランクを維持しなければならない。



一般的なSTGには無いようなシステムがあったり、表に出ないパラメータが表示されていたりすることがお分かり頂けたかと思う。上記の例の他にも様々なシステムがあり、全てを完全に理解するのは大変に難しい。しかしながら、下手すればごった煮、詰め込みすぎにもなってしまいそうな複雑なシステム群が上手く調和しているのがこのゲームの凄い部分なのである。最初は無駄で過剰に思える様々なシステムとそれに付随するマニュアルについても、ゲームを理解していくにつれ無駄で過剰な部分など無かったと思えるようになるはずだ。マニュアルを含めたゲーム全体は過不足無く調和し、「Hellsinker.」というゲームを形作っている。



いや、ゲーム全体という表現を使うにはまだ演出面についての言及が必要だろう。



これについても素晴らしい、としか言えない。BGMや映像の完成度が高いのはもちろんのこと、それらの組み立て方が絶品なのである。残念ながら筆者はネタバレを回避しつつこの演出の素晴らしさを適切に伝える語彙を持ち合わせていない。是非自分の目で、耳で感じてみて頂きたい。





このゲームの面白みがわかるまでにはある程度の時間がかかる。マニュアルも難解であり、プレイヤーを選ぶ部分があると言わざるを得ない。しかしこれこそが同人ゲームのあるべき一つの形であると筆者は考えている。原作の人気に乗じた二次創作のキャラゲーも悪くないし、既存のシステムをアレンジし流用したゲームも悪くない。だが、商業ルートには乗せられないゲーム、みんながそこそこ楽しめるゲームではなく一部の人だけが深く楽しめるゲームを利益を考えず好きに作ることができるのが同人ゲームの大きな利点では無いだろうか?Hellsinker.を商業ルートに乗せようと思うならば、削るべきものや加えるべきものが多く出てくるはずだ。だがそれらは「Hellsinker.」が完全な「Hellsinker.」であるために存在しなければならなかったもの、あるいは存在してはならなかったものなのである。広いユーザーに楽しんでもらえる公約数を探すためにはある程度の妥協が必要だろう。「Hellsinker.」は、妥協が必要ない同人ゲームという環境だからこそ完全な形で存在できたのだ。

無論、その妥協のいらない環境に妥協をしない創り手が居ることは必要だ。長い年月をかけ、個人製作でこのゲームを完成させたひらにょん氏の才能にはただただ驚くばかりである。



総評。「Hellsinker.」、稀に見る完成度を誇る一品。
骨太なゲームを求めている方は挑戦してみてはいかがだろうか?

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(同人ゲームのため、一般には流通していません。公式サイトを参照)

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